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トレーニングレポート
1234
2012/01/24

育成年代のメディカルについて 5

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『育成年代のメディカルについて5』~JFAアカデミーの取り組み~

目 次
第一回『早期発見・早期安静の重要性』
第二回『セルフチェック』
第三回『セルフコンディショニングの実際』
第四回『オスグットについて』
第五回『腰椎分離症について』
第六回『その他の傷害について』


第五回『腰椎分離症について』

前回のオスグット・シュラッター病に引き続き、育成年代で頻出する障害、腰椎分離症について紹介します。
腰椎分離症はスポーツをしている中学生に多く診られる腰の障害です。


 
特に、体幹を反ったり捻ったりする動作が腰椎に負担がかかりやすいと考えられており、サッカーでは
そのような動作が頻発するため、腰椎分離症が多く発生します。また、競技レベルが高いほど発生し
やすいとも考えられています。
 


腰椎分離症は、腰椎の疲労骨折で特に第四・第五腰椎に多く診られます。


 
症状は、腰を反ったり捻ったり動作で痛みが出るケースが多く、その場合腰椎分離症を疑います。


 
治療法は、分離がどのくらい進行しているかによって変わってきます。
早期に発見できた場合は、骨が癒合する(骨折が治る)のを目標として、コルセットなどで固定し、
安静にします。
腰椎は常に負担がかかる部位なので、骨がつくには3ヵ月程度かかることも多くあります。


 
完全に分離してしまって、癒合する見込みがなければ痛みの具合をみながら復帰を目指します。
この場合は骨折したままなので,将来的に疼痛を繰り返したり、分離すべり症へ悪化してしまって
パフォーマンスに影響する危険性があります。


 
そうならないためにも、分離症もオスグット同様、早期発見が非常に重要です。


 
一般的に分離症は、レントゲンで判断されますが、レントゲンではっきりと骨折がみえる時期では、
骨癒合が期待できないことが多く、もっと早い時期に発見する必要があります。そのためには、
MRIとCT検査が有用です。

 
(腰椎を輪切りにしたCTの画像。)

CTでは,小さな骨折線でも明瞭に判断できますし、さらに MRIではCTではっきりする前の段階でも
腰椎の負担のかかっている部分に白く光る影が確認できるため、最も早く分離症を発見できます。
腰痛があって疑わしい場合は、ぜひ、レントゲンだけではなくMRIとCT検査を受けることを強く勧めます。
(早期発見のためには、以前取り上げたセルフチェックが重要です。)


JFAアカデミー熊本宇城における腰椎分離症の発症状況
(開校~2011年12月31日まで)

在籍人数      50名
発症件数      12件
発症時平均年齢  13.5歳

幸い、分離症からすべり症に移行した選手はいません。
アカデミーでは、オスグットが平均12.5歳で発症したのに比べ、腰椎分離症は13.5歳と、少し上の年代で
発症していることがわかります。


 
また、過去に分離症になったアカデミーの選手たちは、
『日常的に行っているセルフチェックで、怪しい日が続いた』
『サッカーをしている時、強く蹴ろうとして踏み込んだ瞬間に腰痛があった』
『クロスが上がってヘディングしようとしたら腰痛があった』などと話していました。


 
これら、生の声も今後選手たちが自分で自分の状態を認識するのに有用な情報です。


 
それでは、腰椎分離症を予防するにはどうすれば良いのでしょうか?


 
一般的に分離症患者には、股関節周囲の柔軟性が低く筋力がない。体幹の安定性が低いという傾向に
あります。
アカデミーにおいても、分離症を発症した選手は他の選手に比べて、股関節周囲の柔軟性が低く、筋力が
不足している傾向にありました。


 
股関節周囲の柔軟性が低いと骨盤の動きが悪くなり、腰椎に必要以上の負担がかかるということが
考えられます。


 
また、体幹の安定性を高めて、かつ股関節周囲の筋力が強くなることも腰椎の負担を減らすためには
重要です。


 
オスグット同様、人それぞれ腰椎に負担のかかる原因が違うため、『コレをしていれば大丈夫!』という
予防法はありません。


 
常に全身的なケアとトレーニングが必要になってくることには変わりありません。

次回、最終回は育成年代に起きやすいその他の障害について、アカデミーの過去の症例をもとに紹介
します。


10:13
2011/11/18

育成年代のメディカルについて4

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育成年代のメディカルについて4 ~JFAアカデミーの取り組み~

目 次
第一回『早期発見・早期安静の重要性』
第二回『セルフチェック』
第三回『セルフコンディショニングの実際』
第四回『オスグットについて』
第五回『腰椎分離症について』
第六回『その他の傷害について』


第四回『オスグットについて』

今回はオスグット・シュラッター病について紹介します。
オスグットは10歳~14歳の成長期の男子に多いスポーツ障害です。特にサッカーやバスケットボールなどに
多く診られます。


 
1903年にボストンのロバート・ベイリー・オスグットさんとチューリッヒのカール・シュラッターさんにより発見
されたため、オスグット・シュラッター病と呼ばれています。決して、押すとグッと痛み、シマッターと感じる
からではありません。
 

オスグットは腿の前の筋肉、※大腿四頭筋の付着部、(膝の前面)で起きます。
※(大腿四頭筋=大腿直筋+外側広筋+中間広筋+内側広筋)
 

(膝を横から見たレントゲン写真)

成長期の子供たちには、大腿四頭筋が付着している脛骨粗面と呼ばれる部分に、これから成長していく骨の
元となる骨端核があります。


 
スポーツ動作により大腿四頭筋に負担がかかり過ぎると、この部位に牽引力がかかって痛みが出ることが
あります。


 
オスグットは、我慢すれば頑張ってプレーできるくらいの痛みであったり、痛みが出るのは練習前後で、
プレーには影響はなかったりする場合が多く、早期に安静にされないケースが多くあります。


 
しかし、早期に安静にできず、症状が悪化してからでは、
『なかなか痛みが取れない』
『少し休んで良くなっても、プレーをするとすぐ再発してしまう』という状況に陥ってしまう危険性が高くなります。
そうなってしまっては、トレーニングを100%の力で行うことが難しくなり、サッカーの上達にも影響が出て
しまいます。
 

『基礎技術の習得は15歳までが非常に重要。膝や足に痛みがありながら基礎技術の練習を行っても上達
しない。』
元フランス国立サッカー学院(INF)校長 クロード・デュソー氏

アカデミーでも、入校前にオスグットを発症し痛みがありながらプレーを続けていた選手は、完治して合流
するまでの期間が、入校後発症し早期に安静をとった選手と比べ、長くなっています。

JFAアカデミー熊本宇城におけるオスグットの発症状況
(開校~2011年10月31日まで)
在籍人数 50名       
発症数 27件       
平均発症年齢 12.5歳   



この結果からも、早期発見早期安静は非常に重要だと言えます。早期にオスグットを発見するには、



膝の下のデッパリを押すと痛いか?



スクワットをすると膝が痛いか?などのセルフチェックが有用です。
このセルフチェックでの痛みが続く場合、医師の診断を受けるのが賢明です。
早期に発見でき、レントゲン上異常がなく症状があるだけであれば、アカデミー熊本宇城では多くの場合
2~4週の患部安静(症状により異なる)4~6週での競技復帰としています。
 


しかし、早期にオスグットを発見できて、指導者がクラブの練習を休ませていても、活発な子供たちは他の
場所で走り回って遊んでいるということが多々あります。


 
サッカーが大好きな子供たちに、辛い思いをさせて無理に安静を強いるのは、指導者も保護者も心が痛む
ことでしょう。
そんな時は原点に立ち返り、子供たちの目標を再確認しています。



アカデミーの選手たちは皆、プロのサッカー選手になって世界の舞台で活躍することを夢見ているため、
『その夢を叶えるためには、今どういう行動を取るべきだろうか』という観点で考えます。


 
その観点から考えると、育成年代においては、早期にケガを完治させ質の高いトレーニングを行える期間を
長く取る、という選択肢を選ぶケースがほとんどです。

そして、早期安静にし、オスグットを完治させるには、選手自身が、なぜ今安静にしなければならないのか
ということを理解し、ケガは誰かが治してくれるのではなく、自分で治すという強い意志を持つこと


 
指導者や保護者が、焦らずゆっくりやるようサポートし、患部に負担のかからないトレーニングは積極的に
行わせることなどが、非常に重要です。
 


では、オスグットを予防する方法はないのでしょうか?


 
オスグットの原因は、前述した通り、大腿四頭筋に負担がかかり過ぎることです。
トレーニングにおける、大腿四頭筋への負担をコントロールすることは非常に重要です。
しかし、負担をコントロールし過ぎて、トレーニングが質の低いものになってしまっては本末転倒です。


 
アカデミーでは、トレーニングの質を確保しつつ、負担のかかりやすいトレーニングは頻度を調節して行って
います。(シュートトレーニングは週1回。週2回行う場合も連続しては行いません。)


 
これは、トレーニングの強度を弱めれば良いという意味ではありません。トレーニング強度だけが問題では
なく、実際には大腿四頭筋以外の部分の影響が大きくて、結果的に大腿四頭筋に負担がかかっている事
が多いです。
 


例を上げると、体幹が弱く動きの軸がないため、下半身の筋肉に負担がかかり過ぎる。股関節周りの筋肉
が固く、動きが悪い、または弱いため四頭筋に負担がかかる。足首の動きが悪くて四頭筋に負担がかかる
など、様々です。


 
『オスグットにならないためにはコレをすれば良い!』
『オスグットになったらコレをすれば良い!』という特効薬はありません。
常に全身的なケアやトレーニングが必要になります。


 
サッカーを上達させるには質の高いトレーニングが必要で、
質の高いトレーニングを継続して行うには強くバランスの良い身体が必要です。


 
強くバランスの良い身体を作るためには、選手自身がセルフケアの意識を高く持つことが非常に重要です。
アカデミーでは、このような観点からもセルフケアの重要性を選手たちに啓発しています。


 
次回は、同じく育成年代に頻出する障害、腰椎分離症について紹介します。



11:12
2011/09/22

育成年代のメディカルについて3

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『育成年代のメディカルについて3』 ~JFAアカデミーの取り組み~


目 次
第一回『早期発見・早期安静の重要性』
第二回『セルフチェック』
第三回『セルフコンディショニングの実際』
第四回『オスグットについて』
第五回『腰椎分離症について』
第六回『その他の傷害について』


第三回『セルフコンディショニングの実際』

今回はアカデミーで行っているコンディショニングの実際の方法について紹介します。


 
コンディショニングとは『ピークパフォーマンスの発揮に必要な全ての要因をある目的に向かって望ましい状態に
整えること』と定義されます。


 
コンディショニングには、身体的・環境的・心的因子に分けて考えることができ、暑熱・寒冷環境あるいは高所に
順化したり、試合前に心の準備したりすることなども含まれます。また状況に応じて、どんなコンディショニングが
必要か考えて実行する能力が必要です。


 
アカデミーで活動する中学3年間は、自分の力で、このコンディショニングを行えるようになるための教育を行って
います。


 
今回は特に全体で時間を割いて行っている、『練習後のストレッチ』と、『体幹トレーニング』をメインに紹介します。

練習前にウォームアップの一環としてストレッチが行われる場面は多くありますが、練習後のクールダウンとして
のストレッチは省略されがちです。


 
アカデミーでは、毎日練習後10分~15分の時間を設けて、ストレッチを入念に行います。
ストレッチは、サッカーで多用される股関節周囲の筋肉を中心に行います。

アカデミーのストレッチの例

ストレッチの例.pdf (ダウンロードしてご覧ください)

練習後のストレッチは、疲労感も強くあり、手短で、形だけになりがちです。


 
ただなんとなくポーズを取るのではなく、伸ばしている場所をしっかり感じ取り、終わった後に、『あぁ。よく伸びた。
軽くなった』と感じることのできるストレッチを行うことが重要です。


 
同じ部位を伸ばすのにも、さまざまな方法があり、これをしなければならない!という決まったものではありません。
大切なのはどんな方法で行うかではなく、与えられたメニューの中で最も良いストレッチをしようという心がけを
持つことです。そして、さまざまな経験を積みながら、自分に合った方法を見つけることが本物のセルフコンディ
ショニングに繋がります。

続いて体幹トレーニングを紹介します。
体幹とは、でんでん太鼓の、太鼓の部分のようなイメージで、この部分が安定しなければ、手足を安定して動か
すことができず、パフォーマンスは向上しにくく、ケガにもつながります。

 

アカデミーでは、週に2~3回、体幹トレーニングを取り入れています。

 

体幹トレーニングも様々な方法がありますが、
簡単なものができてから難しいものへ
止まりながらできてから動きながら…と発展させ、正しいフォームでトレーンングを行うことが重要です。


 
体幹トレーニングの例↓
 


 
1種目あたり20秒~50秒(うまく正確にできる秒数)体幹の強化する部分にあわせて、うつ伏せ・横向き・仰向け・
立位など数種目を組み合わせて、1回10分~15分程度トレーニングしています。


 
目新しいトレーニングには、選手も興味を持ちやすいのですが、特別なトレーニングをしたから、急激にパフォーマ
ンスが上がるということはありません。今の自分に必要なトレーニングを地道に継続していくことが、レベルアップ
のためには重要だということを、”練習後のストレッチを大事にする“ことを例として、中学生年代で学んでほしいと
思います。
 


自分にあったコンディショニングを身につけるには、正しい知識を学び、毎日実践する習慣をつけることが必要
です。


 
アカデミーでは、グラウンドにおけるコンディショニングだけでなく、寮生活における、睡眠・食事の取り方、暑熱
環境での、水分補給の仕方、クーラーの使い方、などについてもスタッフが指導します。
(写真は管理栄養士:袴田さんによる食育の授業の様子です)

 

また、学年に応じてスタッフが教え込むものと自分で判断させるものの割合を変え、1年生にはコンディショニング
の方法を教えることと、なぜそうするのか理由を理解させることを重点的に指導します。


 
2・3年生と経験を積み重ねるにつれて、徐々に個人の判断に任せる部分を増やして、コンディショニングを行いま
す。そして失敗を成功につなげること、うまくいっている成果をきちんと確認させることにより、本物のセルフコン
ディショニングを身につけるための手助けをしています。


 
育成年代では、例えうまくいかないことがあったとしても、指導者が全てを解決するのではなく、自分の力で自分の
コンディションを整えるという能力を身につけることが非常に重要です。

また、前回紹介した、セルフチェックにより得た情報をもとに、全体で行うコンディショニング以外にも、各個人それ
ぞれに対して必要なセルフコンディショニングを指導します。我々スタッフは、この個別対応こそが、選手にコン
ディショニングの実際を理解させる重要なポイントであると考えています。


 
現代サッカーにおいて、日本と世界のレベルは狭まりつつあります。同等レベルのチームが戦う試合では、コン
ディションが試合の行方を左右する場合が多くなります。


 
育成年代から、コンディショニングの意識を学び、彼らの夢をぜひ実現してほしいと思います。

次回は、育成年代において頻出するスポーツ傷害『オスグット』について紹介します。


09:59
2011/07/25

育成年代のメディカルについて 2

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『育成年代のメディカルについて2』~JFAアカデミーの取り組み~

目 次
第一回『早期発見・早期安静の重要性』
第二回『セルフチェック』
第三回『セルフコンディショニングの実際』
第四回『オスグットについて』
第五回『腰椎分離症について』
第六回『その他の傷害について』


第二回『セルフチェック』

痛みがあっても我慢してプレーし、いよいよ痛みが強くなって、病院を受診した際には重症化してしまっている、
というケースは珍しくありません。痛みを我慢する強い精神力を持つことも大切ですが、一旦練習が終われば、
医学的観点から考慮し、ドクターの診断を受け、翌日以降の練習内容の調整が必要かどうか判断すべきです。
 


前回お話した、『早期発見・早期安静』それを実現するためには、日常的に選手自身が自分のささいな変化に気づく
ということが重要です。今回はアカデミーで行っているセルフチェックを紹介します。
 

セルフチェックは、練習後『自分の身体は今どんな状態だろうか』と自問するところから始まります。
・いつもより、ももの裏の筋肉が疲労している。
・オスグットのところが痛い。
などなど、その日の自分の状態を確認します。異変に対して≪原因を探り解決策を考える≫自問自答を行う自覚を
持つことが大切です。

例えば…

状況把握『練習後の体重の減り具合が激しいぞ』
原因究明『今日は暑かったから汗でたくさん水分を失ったかもしれないな』
解決策実践『練習後にいつもより多めに水分を補給しよう』
という流れを、選手たち自身で作り出すことが重要です。


この場合、練習後のこまめな水分補給を義務化したり、スタッフが水を飲むように言うことは簡単ですが、選手自身が
必要性を感じ、自らの意思で実践するということをこの年代で身につけてほしいと思っています。

このような思いから、選手自身が原因や解決策が自分で考えてもわからない時に初めてスタッフはアドバイスをする
ようにしています。


 
セルフチェックのポイントを生徒たちが整理しやすいよう、アカデミーでは以下のことを実践しています。



日の体重の記録
ただ計るだけでは意味がありません。
(夏場で汗の量が多い)・(別メニュー中で運動量が少ない)など、その時の状況と、体重の変化を照らし合わせて、
水分補給をこまめにとる、間食を減らすなど、どんな対応が必要かを考えることが重要です。

コンディションチェックシート
名前 体調 筋疲労 ケガ


   
練習後・就寝までの間に、体調・筋疲労・ケガについて自分で考え、異変があれば状況を記載します。
異変を敏感に感知し、寒気がすれば温かくして寝る、ふくらはぎの筋疲労が強ければ、ふくらはぎのストレッチを
多めにするなど、対応策をとる習慣をつけます。

 

ケガは、特別に痛みがあるかどうか感じて、痛みがあれば記入し、トレーナーに相談します。



また、この年代に特に注意が必要な、オスグット・腰椎分離症は特別に、日常的にセルフチェックを行うよう指導して
います。

帰寮時のコンディションチェック
毎週帰寮時にトレーナーによるコンディションチェックを行います。筋肉の固さのチェックや、ケガの状態の確認を行い、
自分自身の身体がどういう状態にあるのかを選手に理解させるためのサポートを行っています。
これはトレーナーがテーピングをしてあげたり、マッサージやストレッチをしてあげたりするというものではありません。
選手自身が自分の身体の状態を感じることが前提であり、トレーナーは選手の身体が今どんな状態で、どんな対応を
すべきかを理解させるためのサポートを行います。

 
ケガを早期発見するためには、選手自身で行うセルフチェックが非常に重要です。また、このセルフチェックを行い、
必要なコンディショニングを実践することができれば、ケガの原因を未然に摘みとることにもなります。
 

そして、何より重要なのは、セルフチェック→セルフコンディショニングの流れをしっかり行うことで、明日100%の力を
出し切って、良い練習ができるということです。
何の問題もなく、練習が行われているということは、一見当たり前のことのように感じますが、日々の小さな努力が
あって、今日良いトレーニングが行えたということを生徒に自覚してほしいと思っています。


 
『練習で100%の力を出し切る』ことが継続できれば、トレーニングはより質の高いものになります。それは生徒たちのより良いプレーヤーになるという夢に近づくための大きな一歩です。

 
セルフチェックとは少し異なりますが、自分の成長の様子を客観的にとらえるため、アカデミーでは、以下のことを
実践しています。

毎月の身長の記録
毎月身長を記録することで、急激に身体が成長している時期を自覚し、ケガの予防などの意識を高めます。
また下のグラフと見比べることで、自分の成長が、今どの段階に来ているのかを確認できるようにします。

6歳~現在までの1年間の伸長の推移の観察

各選手に対して成長のグラフを作成し、自分の成長がどの段階なのかを実感させています。成長の段階に応じて、
ケガを防ぎ、より効果的なトレーニングを実施するためには、コーディネーション・持久力・speed・パワーなどのトレー
ニングのバランスを変えなければなりません。アカデミーではW-upなどで、選手ごとに個別のトレーニングを実践して
います。



年間の傷害の記録の検証
各学年、誰が・いつ・どんなケガ(外傷・障害・内科的疾患)をして、どれくらい休んだのか?という一覧表を作成し、
全生徒を集めて、昨年度末にディスカッションを行いました。


 
ディスカッションの中では、
「外傷より障害が多く、復帰までかかる日数も長い。」
「障害は日々の積み重ねで起こるので、ケアを積み重ねることで、長期離脱を防ぐことができる。」
「2月に体調不良者がとても多い。」
「寮内は感染しやすいし、流行する時期は各個人が手洗い・うがい・咳エチケットの自覚を高く持つことが必要」など、
建設的な意見が次々に飛び出しました。
中には「○○君は大腿四頭筋系のケガが多い。四頭筋のケアをしっかり行うことが重要」という個人的なアドバイスも
ありました。教科書上の知識を一方的に伝えるよりも、自分たちの経験を確認し合うことで、生徒たちは本質を理解
しやすくなっているように感じます。


また、季節や環境によって何に注意すべきかが変わってくる、ということも実際の経験を通して学ぶことができて
います。


 
また、宇城アカデミーでは新年度の選考試験が終わり、合格者確定後入校前にドクターによるメディカルチェックを
行い、傷害発症のリスクがある選手に対して注意を与える活動を行い、入校後の長期離脱を未然に防ぐ活動を
行っています。
 
(白石Dr.には定期的にアカデミーにお越しいただき、生徒の診察をしていただいています。)

全ての事が形式化されてしまっては何の意味も持ちません。得られた情報をもとに、どんな対応が必要なのかを考え、実践することが非常に重要です。
 

とは言っても、アカデミーでも失敗の連続です。セルフチェックを怠って、翌日の練習前、あるいは練習中になって
痛みの存在に気づき、症状を悪化させたり、練習ができなくなったり、という経験をした生徒も多くいます。 
練習後十分な水分補給を怠って、翌日脱水症状を訴えた選手もいます。

 
しかし、失敗を通して生徒たちは、本質を学んでいきます。スタッフは適切なタイミングでアドバイスを与えながらも、
あえて失敗の芽を摘まず、選手が本質を学び、自己管理のできる選手になって、アカデミーを卒業できるようサポート
しています。

では、実際にはどんなコンディショニングの方法があるのか、アカデミーで行っているコンディショニングの実際に
ついて、次回にお話します。

08:59
2011/05/10

育成年代のメディカルについて 1

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『育成年代のメディカルについて』 ~JFAアカデミーの取り組み~

スポーツレベルが向上している昨今、メディカルサポートは、アスリートに欠かせないものとなっています。
育成年代でも同様、メディカルについての知識は、選手はもちろん、指導者や保護者も知り得ておくことが
望ましい部分だと言えます。このコーナーでは、育成年代のメディカルの考えと、JFAアカデミー熊本宇城
の取り組みを簡単に紹介していきます。

目 次
第一回『早期発見・早期安静の重要性』
第二回『セルフチェック』
第三回『セルフコンディショニングの実際』
第四回『オスグットについて』
第五回『腰椎分離症について』
第六回『その他の傷害について』


第一回の今回は『早期発見・早期安静の重要性』をテーマにお話します。

子供の身体の各器官がどのように成長するかをグラフで記した、スキャモンの発育発達曲線によると、
神経系は中学生年代までに100%に発達します。


 
神経系の発達が最終段階の中学生年代では、ボールを思い通りにコントロールしたり、正確にパスしたり
するなどの、テクニックの習得が非常に重要です。


 
強い負荷のかかった状態でも、正確なテクニックを発揮できることが重要であり、そのためには、力を加減
しながらではなく、100%の力を出し切ってトレーニングを行う必要があります。

痛みをごまかしながらでは、100%の力を出し切ることはできず、本当に質の高いトレーニングを行うことは
難しくなります。
 


アカデミーでは、100%でプレーできる時間を長く取れるように調整しています。

図をご覧ください。
青が痛みなくプレーしている期間
黄色が痛みを我慢しながらプレーしている期間
赤がプレーをしていない期間を表しています。
 
プレーしている時間は、(青+黄色)上の図の方が、長くなります。
しかし、100%でプレーしている時間(青)は、下の図の方が長いです。
アカデミーでは下の図をイメージして活動しています。



また、痛みを我慢しながらのプレーでは、本物のテクニックが上達しにくいだけでなく、ケガが悪化したり、
かばって他の部位を痛めてしまったりする危険性もあります。


特に、成長期に起きやすい、骨端症(オスグット・シーバー病など)や、腰椎分離症は、早期に安静にすると
早期に完治する可能性の高い傷害です。
逆に、発見が遅くなると、なかなか治らない、長期のケガになってしまう危険性もあります。



JFAアカデミー熊本宇城では、2010年度、全生徒32名中13名がオスグットを発症しました。痛みが発覚
したら、早期に安静にして、13名中12名は、再発なく、平均※47.6日で全体練習に合流することができ、
現在も痛みなくプレーできています。

※(宇城。昨年度のオスグットによる別メニュー期間平均日数です。安静期間は症状によって異なります。)
 


そのため、育成年代では、傷害を早期に発見して、早期に安静にすることが大切だと言えます。
しかし、この育成年代の選手にとって、サッカーから離れるということは、非常に辛いことです。


 
周囲の指導者や保護者が、なぜ休むべきなのか理解させ、焦らずゆっくりやるように、精神的サポートを
することが非常に重要となります。



また、アカデミーでは、別メニュー中も患部に悪影響を及ぼさないトレーニングは積極的に行っています。
(ストレッチや体幹トレーニングなど)


 
この患部外のトレーニングに集中して取り組み、ケガしにくい強い身体にレベルアップして復帰できるか
どうかも、周囲の大人のサポートと本人の努力にかかっています。



では、早期に傷害を発見するためにはどうしたら良いのか?次回は、傷害を早期に発見するために、
アカデミーで行っている取り組み、『セルフチェック』についてお話しします。

10:24
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